2015/11/19

宇宙の孤児

電車通勤中に小説を読むので、過去に買って読んだものの、すっかり内容を忘れているSF小説を、本棚から引っ張り出して読み直しています。結構というか本当にすっかり忘れていたり、読みながら思い出したものの、当時は感じなかった事を感じたり、数百円の本で10年以上楽しめるなんて、なんてお得な性格なんだ、俺!

タイトルの「宇宙の孤児」はハインラインの初期の作品で、ケンタウリ遠征隊の大宇宙船が遠征中に一部の反乱者によって大きなダメージを受けてしまい、中の住民がケンタウリへ向かう大宇宙船の中であることさえ忘れてしまっている時代の話です。
巨大なスペースコロニーのような宇宙船で、生命維持装置は辛うじて稼動しているものの、宇宙船をシールドする装置は既に停まっていて、生まれてくる20人に1人の割合で奇形児が生まれてくる。そういったミューティーが支配する上層区画からの侵略行為を防ぎながら<船長>の政治の元で、下層の重力地帯で中世時代レベルの生活をしている<船員>たち。
賢く思考能力のあると思われる者は、<科学者>という身分で残された「本」を読み、伝承される知識を受け継ぐことができる。
主人公のヒョウは、新米の<科学者>だが、ミューティーとの争いで、ミューティーの1グループのリーダーであるジョウ=ジムに捕虜にされる。馬鹿ではなかったので、食われずにジョウ=ジムの話し相手かボードゲームの対戦相手になったりしていたが、ある時、無重力地域の「操縦室」や「船長の部屋」へ連れて行かれ、<船>が伝承の<遥かなるケンタウリ>へ動いている宇宙船だということに気が付く。

なんか基本設定は、メガゾーン23に似ていますね。(^_^;)宇宙の孤児には、ロボットも出ないし、1980年代の東京じゃなく、デザルグとも闘わないし、ナイフとパチンコしか武器の無い中世時代のような世界ですが...。

ミューティーという設定が、発表当時のベトナム戦争の枯葉作戦での被害となった奇形児の影響を受けているようだし、明らかに女性蔑視な世界だったり、現在で出版されるには、差別用語の壁が立ちはだかって難しいような感じで、そういった面からも古典SFなんだと感じるストーリーでもあります。

しかし、登場人物が当然と思っている大宇宙船内の話なので、当初読者は説明不足的な世界観に、「?」と思いながら読み進め、主人公ヒョウとともに事実(この物語の世界観)を知っていくという疑似体験をできる点は、最初読んだときに鮮烈でした。
続けて2回目、3回目と読むと、設定の緻密さにも感心するという、何度も楽しめる本でした。
(2006/01/18 旧ブログ掲載の記事を転載)

旧ブログ時のコメント

    単二
    URL: http://blog.goo.ne.jp/linkerbell/
    DATE: 01/06/2007 12:27:42 PM
    こんにちは。(^^)
    本作の原典は1941初出との由。
    http://www.inawara.com/SF/H071.html
    ベトナム戦の影響ではないようですね。
    ですが、これ、私にとってもなぜか心に残る作品です。
    いいものを思い出させてくれてありがとう。

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